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「なっなななな…なに言って」
「さっき言ってたじゃない。」
依然悪気の無い微笑を向ける恭子にかなめは何も言えず口元を引き攣らせ汗を流す。
そんなかなめに構わず宗介がベラベラと喋りだす。
「千鳥、これは不審物では無い、君の為の薬だ。
…それより気付かなくてすまない、千鳥。辛いだろう。
君の症状は激戦下、強いストレスと栄養不足にさらされた兵士に良く見られる。
そんな兵士たちを俺は何度も見てきた。
その苦しみ様といったら、尋常では無かった。彼らの鬼気迫る顔を俺は忘れたことは無い。
俺のとある上官(中国系アメリカ人)などは、その苦しみに耐えかね
聞き分けの無い部下(江戸川区出身)を一人半殺しにしていた。…恐ろしい事だ」
「いや、ちょ…!ちがっ…」
なんて誤解だろう…!!なんて恥ずかしい!!よりによってコイツに?!(本人はなんとも思ってないにしろ)
しかもクラスのど真ん中で何やら珍しいものを片手にした宗介は異様に目立って(浮いて)いた。
内容が内容だ、こんな事が皆に知れたら…
顔を真っ赤にしてかなめは宗介の口を手でもって塞ごうと試みる
しかし、そのほっそりとした腕は、いとも簡単に宗介の大きな掌に捕らえられてしまった。
「落着くんだ。問題無い、こんな時こそ、これだ千鳥。」
ずいっ と宗介はかなめにその怪しげなビンを押し付ける。
その時かなめの脳内には『相良軍曹の黒いTVショッピング~入手ルートは言えないが問題無い~』という意味の解らない映像が浮かんだ。
…つまり大分混乱していた。
「ちょっ…話を聞きなさいよ…ってこれなんかドス黒いけど!?ドロドロしてるけど?!!
うわっ…なんかあったかいし…書いてある字も読めない…
ってかこれバイオハザードマークってヤツじゃないの――?!」
「それを飲むといい」
……
「…んあ゛ぁ―――っ!!!!!」
その返答にかなめはがくりとうな垂れ、がしがしと頭を掻き毟る。
「あ、あんたってヤツは~……だーかーらぁ~…」
「何だ千鳥、苦しいのか?やはり早くこの薬を!
君は便…」
「言・う・なぁぁあああああああ―――!!!」
バっチーン!!
どんがらがっしゃ!!!
****
机や椅子とともにハリセンのフルスイングにシバき倒された宗介がむくりと起き上がる。
「なかなか痛いぞ千鳥」
「どやかましいわ、この無自覚セクハラ戦争ボケ男!!!!
あんたなんて、あんたなんてっ…、マズイマズイと巷で有名な『焼肉味のぼん太君チョコ』でも食って
一人だけ美味いとか言ってしまって恥をくが良いのよ!
皆に馬鹿にされて暮らすが良い!!辱めを受けるが良いわ!!…うわーーーーーん!!」
「良く分からんが、何故泣く千鳥?!そんなに辛いのか君のその…」
「こおのバぁカぁああーー!!」
「痛い痛い痛い…」
****
「あ~あ~」
とんぼメガネの天使がくすくす笑っている。
何時の間にかクラス中の視線は騒動の中心の二人に注がれていた。
それもその筈、
ひょんな誤解が大騒動に変わった頃にはとっくに授業は始まっていたのだから…。