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注意:今日が7月7日だと思って下さい。

偽造文書上の誕生日おめでとう!(笑)ウルズ7!!記念SSです。

ぶっちゃけ何も考えずに勢いだけで書き殴った実験的SSです;
ごめんなさい、時間無かった;;なんだこのタイトル!!(笑
色々無理がある感じでアレな感じですが、どうぞ!
1話は飛ばしてもいいかも。;



――7月某日。 都立陣代高校2年4組の五時限目はHRが執り行われていた。


「え~。 と、いうことでー! 今度の七夕でやるウチの出し物を決めたいと思います! 銘々意見を出してちょうだい!」

学級委員長の千鳥かなめが教壇に立ち、クラスに呼びかけた。
その顔は、義務感とやる気に満ち溢れ、『学級委員の鏡』と言ったところだった。

『七夕の出し物』とは、陣大高校の夏の風物詩である。
元々は近所の幼稚園の七夕祭りで歌を歌ったり、出店を出したり‥‥という活動に起源を置いているらしいが
そのイベントが最も評価されたクラスは、市長から豪華景品を貰えるとあり、この時期の陣校生達は動機は不純ながら異様な盛り上がりをみせる。
はずだったのだが‥‥‥‥


「ん~笹でも飾って~短冊でも書けば良いんじゃな~い」
「それでいいとおもーう」
「さんせーい」
「異議無ーし」

委員長のやる気とは裏腹に、クラスのアチコチからやる気の無~い気だる~い返事が返ってきた。

それと言うのも無理も無い、7月に入ったばかりだというのに、その日の気温は35度を回っており
エアコンも付いていない狭い教室に押し込められれば、その不快さたるや想像に難くない。
そのうえ (恐らくコチラの方が彼らのやる気の欠如の原因として有力だが) 今年の市長からの『豪華景品』は「便利調理具一式」らしい。
自炊とは縁遠い彼らには何の魅力も無い報酬である。

だからこの顛末は仕方ない、予想もしていた。
そう、仕方ない。それはかなめも分かっている、が。

「あーだりー」
「あーあぢー」

かなめには、このだらけたクラスメイト達を野放しするわけにはいかない理由があった!

『バンっ!!』
かなめが教卓を叩きつけると、ざわついていた教室が水を打ったように静まり返る。
それを確認してかなめが吼える。

「‥‥だーかーるぁ~!!!! 笹飾って短冊を書く、その『所謂七夕』を盛り上げる為に出し物をやろうって言ってんのよ!!」

一瞬ひるんだもののクラスメイトも負けじと応える。

「‥‥でもなあ~」
「暑いし‥‥」
「だるいし‥‥」

依然、やる気の欠片も見られない。
そんな彼らを一瞥して、かなめが悔しそうに握りこぶしをわなわな震わせながら力いっぱい語り始めた。

「あぁっ‥‥嘆かわしい‥‥!!」
「ち、千鳥さん‥‥‥‥?」

「一体何を言っているのあなた達‥‥?!
これが何の為のイベントか解ってるの? いたいけな子供達の為のイベントなの!!
‥子供たちの願いを、七夕という形で聞いてやろうとは思わないの?! 喜ばせてあげようとは思わないの?!」

熱く語るかなめに圧倒されると同時に、その言葉の一つ一つが彼らの心に突き刺さる。

「千鳥さん‥‥‥‥」
「千鳥‥‥」

――ああ、なんて立派なんだろう。
   この暑いのに、この責任感。出来ない、自分にはとても出来ない。


「それに‥‥」
クラスがまさに一つになろうとしているところ、かなめは続けた。
「それに‥‥‥‥?」
クラスメイトは委員長の言葉を待つ。


「便利調理具一式、‥‥景品だって、なんとも魅力的だと思わないの?!」

‥‥‥‥‥‥




(そっちかよ!!)

別の意味でクラスの心が一つにまとまり、次の時にはまた「あつーい」だの「だりー」だのが始まった。

「くっ、何よ! ル・ク●ーゼよル・ク●ーゼ?!所詮あんた達にはその価値は解らないでしょうよ!!」
一体どれだけの奥様が泣いて喜ぶとでも‥‥とかなんとか言いつつかなめが心底悔しそうに呟いている。

「あーもう、なんでも良いから意見よ意見!!なんか無いの?!決まるまで帰れないわよ?!」
開き直ったかなめは、学級委員の最後の手段で発する呪文。 『終わるまで帰れないわよ』を放った。

しかしそれもイマイチ効果を示さず、クラスの連中は相変わらずの態度だ。
これまでか‥‥とかなめが思ったところに、ふいに一人の意見があがった。


  「子供向けの狙撃講習などはどうだろう」


言葉を発したのは、ザンバラ髪にむっつり‥‥言わずもがなの相良宗介だ。
実のところ、HRが始まった時から彼は意見するべく挙手していたのだったが、委員長の眼中から除外されていたようで‥‥
しびれを切らした彼は、当てられても居ないのに意見したのだった。‥‥が。

「もー、少しは協力的になってくれないかな~。いっちょやってみると楽しいわよきっと!」
依然、かなめは彼をスルーしている。

「狙撃主養成講習がいいと思うぞ、子供とは言えこの世の中命を狙う者は幾らでも居る。
弱者の立場に甘えてはいけない、目には目を、狙撃主には狙撃主を‥‥だ。」

何も聞こえていない、と言った様子でかなめは続ける。
「誰も意見しないってんなら、コッチから指名していくわよー?! オノD! なんか出しなさい!!」

唐突なかなめのフリに『げっ』という顔をしてからオノDこと小野寺孝太郎は応える。
「えー、んな無茶な‥‥‥‥
‥‥そうだなあ、『ドキッ!女だらけの水泳大会』なんてどうだー?夏だしよ~、暑いしさ~、フンイキ出ると思うぜー!」

その応えに、かなめが露骨に嫌な顔をした。
かなめだけでなく、可哀想に孝太郎はクラス中の女子から「やだー、オノDのスケベ!」「変態」「サイテイ」などなど酷評を受ける事となる。

(だから嫌だったのに‥‥!!)
(いや、良く言った! お前は男だ!!)
孝太郎の心は折れそうだ。クラスの男子からは同情と敬意の眼差しが注がれている。

「七・夕だっつってんの!!何が悲しくて水着着て短冊書かなきゃなんないのよ、論外よ論・外!!
次、えーと誰か‥‥‥‥‥‥」

「狙撃講習を推奨する、君達は解っていない日常に潜む危険を‥‥それを」


――シュッ!! ガッ!!



それは一瞬の閃光のようだった。

クラスメイトがその閃光の向かう先に目を向けた時には、初夏の陽炎の中、相良宗介がむくりと起き上がろうとしていた。
‥‥あたりには、教材の巨大な三角定規やら分度器やらが転がっている。


「何をする、千鳥」
「やっっっかましい、あーーー!!このくそ暑いのに!!
狙撃主とか命を狙うとか言うな!七夕よタ・ナ・バ・タ!!あんたはそこで寝てなさい!!」

「むぅ‥‥、しかしだな狙撃の訓練というものは幼少の頃から‥‥というより何なのださっきからその、タナバタとかいうのは。」
「は?ああ、あんたは知らないわよね」

やれやれ、と思いながらもそこは真性世話好きのかなめであった。
HRの最中だと言うのに御丁寧に解説を始めてしまう。

「あー‥‥七夕って言うのは日本の伝統行事で、織姫と彦星がうんたらかんたら‥‥‥‥」
「‥‥ふむ‥‥、なるほど」

宗介は大人しく聞いていたが、聞き終わると何やら思案顔で唸り出す。
「‥‥しかし解せない何故」



(あーなんか何時ものコントが始まった‥‥)
一方で放置されているクラスメイト達、 いよいよ収集がつかなくなるか‥‥と思い始めた頃。

「‥‥‥‥えーと。劇とか‥‥どうかなあ」
小柄な眼鏡の男子生徒、風間信二が意見を出した。

「ん?何々風間君?!劇?いいじゃない!どんなの?」
言葉途中の宗介を張り倒して、やっと挙がったまともな意見にかなめは飛びついた。

「えーと、恥ずかしいんだけどさ、実は僕最近自作フィルムの撮影に凝ってて~。 お芝居のシナリオとかも書いてるんだけどさ‥‥。」
「うんうん!」
信二のカミングアウトにはかなめのみならずクラス中が興味深々な様子だ。
「どうかな、よかったら僕に一つ、七夕のお芝居、書かせてもらえない?」

 ‥‥信二が自ら台本を書くというなら、自分達に周る仕事は少ない、そして何より早く決めてとっとと帰りたい!!

「おおーーー!!」
「いいじゃん風間~!!」
「風間君偉い!!」
クラス中から盛大な拍手と賞賛の声を浴びた。 まあ彼らの心中を知るはずなく信二はもうノリノリだ。


「へへへ~、任せてよ、じゃあ明後日までには台本を~‥‥」
話はまとまりそうだ、これで終わる! かなめも含め全員がそう思っていた時。

「待て、風間」

空気を読めない者が約一名‥‥。宗介だった。

「何?相良君?」
「タナバタの芝居とは、つまり先程千鳥が言ったようなオリヒメやらヒコボシやらの話をやるという事か?」
「うん、勿論そうだけど?」

「ならば駄目だ。」
「えっ‥‥?」

その言葉にクラス中が固まった。

「ちょっ‥‥ソースケ?!」
いち早くかなめが突っ込む。

「なっ、てめー相良!折角話しがまとまりかけてるってのになんて事を!」
「そうよそうよ!一体何の権利があってそんな横暴を!!」

『早く帰りたいんだ俺たちは!!』 ‥‥一致団結したクラスに流石の宗介も気圧されそうになるが、続ける。


「落ち着くんだ、聞いてくれ。俺は何もタナバタの芝居が駄目だ、と言っているのではない。」
「‥‥と、いうと?」
信二が訊く。

「ヒコボシとかいう男が駄目だと言っているのだ。
敵の妨害があったからと言って引き下がるなど愚の骨頂。プロならそう簡単に目的を諦めたりしない」
「なんのプロよっ!」
嫌な予感がしてきたかなめが突っ込むが、宗介は続ける。

「宇宙空間の星を隔てて会う事が叶わない‥‥というのも良くわからん、現実離れしすぎている。
そこでどうだろうか、地域紛争が悪化した結果、国境で隔てられた男女の兵士が血の誓いを果たすべく
あらゆる兵器に屈さず再会を果たし、ついには宿敵への報復を‥‥」




スパーーーーーン!!

話も半ば、痛快な音と共に宗介は教室の隅にぶっ飛んだ。反対側ではかなめがハリセンを握り締めている。

「あーもう、黙って訊いてりゃこの戦争ボケは!!人の説明の何を聞いてたのよ?!
何が血の誓いよ、何が報復よ!!恐ろしい事いってんじゃねーってのよ!!
ロマンよロマン!!切なく燃え滾る男女の~‥‥!」


「いいよそれ!すっごくいい!!」

「は?」
かなめは一瞬耳を疑った、空耳かと思った。だがそれは誤りだった。

よりによって信二が、発案を宗介にダメ出しされた信二が。
目を輝かせ、宗介の意見を肯定している。

「血とか報復とか‥‥はどうかと思うけど‥‥。こてこての恋愛劇は僕もどうかと思っててね‥‥。
子供向けの劇なんだけど、今時の子供にはウケないんじゃないかな~とも思うし。
地域紛争とか、そういうリアルな社会問題を出すのは僕もアリだと思うんだよ!勉強にもなるし!!」

なるほど‥‥一理ある。信二の熱意にかなめもついつい納得しかけたが‥‥。

「いやでも幾らなんでも子供向けのお芝居に‥‥」
何か軸がずれてる気がして頑として止めようとする。が。

「いいじゃん、面白そう!」
「うん、もういいよそれでー!風間もやる気だし!」
しかしそんなかなめの気苦労も知らず、クラス中がもはや宗助に賛成ムードだ。
『なんでもいいから早く帰りたいんだ!』正しい判断力が損なわれていた事も手伝って‥‥。


こうなっては流石のかなめも、折れずには居られない‥‥というより何だかもう「なる様になれ」という気分だった‥‥。

「あーはいはい、じゃあそれで決まりね。 取りあえず風間君、悪いけど明後日までには台本ヨロシクね。」
渋々了承して、信二に仕事を託す。

「オッケー!任せて。全然構わないよ!でもその代わりといっちゃなんだけど‥‥」
「なに?」
かなめは首をかしげる。

「主役は、相良君と千鳥さん、この条件を飲んでもらっていいかな?」


「はーーーーーーーーっ?!!」
「む?」




信二の思いもよらない条件に、かなめが絶叫する。
「この戦争ボケと?お芝居?私が‥‥?!‥‥風間君正気で‥‥」
取り乱すかなめ、しかし信二はしたたかに応える

「勿論♪ 嫌なら僕書かないからね。 ‥‥じゃ、僕用事があるからもう帰るよ。」

あっさり言い放つと、スタスタと帰ってしまった。


「ちょ‥‥待って。」
可哀想に呆然とするかなめ。
人事と、クラスの面々もぞろぞろと帰り支度を始める。
最終的に、かなめと宗介がぽつん‥‥‥‥と教室に取り残されてしまった。



「俺は別に構わんが」

「構うわ!!!」




スパーーーーン!!

本日2度目の快音が夏の夕空に響き渡った‥‥‥‥‥‥。



続く
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