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の続きです。


翌日、かなめは恭子と七夕のイベント用に買出しに出かけていた。

「はぁ~‥‥嫌だなあ~どうしてあたしが‥‥」
「お芝居のこと? 大丈夫だよー、カナちゃん舞台栄えしそうだし、お芝居だって簡単にこなしちゃいそうだもん!」
「あはは‥‥アリガト。でもそうじゃなくて‥‥」
「あ、やっぱ相良君の事?」
恭子が尋ねると、かなめは返事の変わりにため息を漏らした。

「そっ。あたしはいいのよあたしは頑張って見せるわよ! でも、あいつにまともな芝居なんて出来るのかしら‥‥
どう考えても、そんな経験無いだろうし、芝居って物を見たことがあるかどうかも怪しいわ‥‥」
「う、う~ん‥‥。そう言われれば、無さそうだね」
でしょーと言ってかなめは深いため息をつく。

「あ、でもさ!」
「ん?」

「七夕のお話なら、きっと恋人同士の役だよね!
そう考えたら、相良君とカナちゃん、上手く行くと思うけどな~。 ホントに仲良しだもんね~♪」
ニコニコしながら恭子はかなめをからかった。
「なっ、ちょっとやめてよ‥‥!!どうして私とあいつが‥‥!! そもそもあの芝居七夕とは名ばかりの戦闘ものじゃないの!」
予想通りの反応、さらに恭子がニコニコとする。

「えーでもラストはちょっと良い感じになっちゃうじゃない♪ ね、しかもさ~、七夕祭といったら打ち上げに花火やるよねー。
カナちゃん知ってる?あれで良いムードになっちゃって、毎年カップルが出来ちゃうらしいよ~。」
「ふ、ふーんそう! ま、あたしにはカンケーないわね!!」
「はいはい♪ もー素直じゃないんだからカナちゃんはー」

軽くたしなめるような恭子に、かなめが何か言い返そうかと言葉を探していた
と、そこへ突然声がかかる。

「や、カナメ!恭子ちゃん、久しぶり!」


はっとかなめが我に返り顔をあげる、
そこには見知った金髪の碧眼の美青年がヘラヘラしながら手を振って立っていた。

「クルツくん!!」


*************



「おいしーーー!」
かなめと恭子はクルツの奢りのアイスに声をそろえて歓喜している。

「で、クルツくんは何しに来たの?」
思い出した、という風にかなめがクルツに話をふったので、クルツはガクリと項垂れた。

「何しにって、そりゃ無いよなカナメ‥‥」
「あはは、ごめんごめん、街でばったり会うなんて珍しいなーと思って。今日は何?プライベート?」
「まあな、ちょっと野暮用で。」
「ふーん。」
そう言って、かなめはさも美味しそうにアイスを口に運ぶ。

「それにしてもなあ、あの宗介が芝居ねえ~。」
アイスに上機嫌だったかなめの表情が途端に強張る。

「‥‥? で、一体どんな劇をやるんだい?」
「‥‥」
かなめが黙秘を決め込んでいるので恭子が変わりに答えた。

「七夕のお芝居だよ」
「タナバタ‥‥?‥‥ああ~ナルホドね~~‥‥」
何かを勘ぐってクルツはニヤニヤしながらかなめを見る。

「‥‥なによ!」
「いやいや、いいんじゃない? まあ、カナメが嫌だって言うなら俺が宗介の代役をやっても良いぜ?」
「結構よ! 大体あんたそんな暇無いでしょ?!」
「いやー結構そんな事無いぜ? 最近はダナンの掃除ばっかだよ。」
「へえー。だからサボって来たってわけね!」
「お、流石カナメちゃん!!鋭いね~、‥‥あーでもそいや今度から暇でも無くなるかな~。」
「ん?何て言った?」
言葉尻が小さかったので、かなめには良く聞こえなかった。

「いや、こっちの事!それよりタナバタと言えば‥‥」
「ん?」
意味深にニヤッと笑うクルツを、かなめと恭子が覗き込む。

「アイツの誕生日だったな~ まあ書類上のだけど」



*************




――その翌日、1日早く信二が台本を完成させて来た。



それまでの間、かなめはビクビクして過ごしたものだったが、
蓋を開けてみれば、何のことは無い、かなめの杞憂であった事が判明した。

課題であった宗介の芝居も、どうやら大事無く済みそうだ。
某生徒会長が伝統行事を穏便に済ませたいらしく、宗介になにやら言付けていた為だ。

度々、「リアリティが足りない」と言っては爆薬を仕掛けようとしたり、実弾を使おうとしたり‥‥
やや難あったがそこはかなめも手馴れたもので、上手くたしなめていた。
演技自体は‥、そもそも主役の台詞からキャラクターから何から何まで宗介そのままであり、
演じている‥‥というよりも、何時もの宗介そのままだったから、上手い下手は問題ではない。

「だから私達を指名したのね‥‥。」
合点が行くと同時にかなめはほっと胸を撫で下ろしす。



――7月6日

驚くほど順調に準備は進み、7月7日が近づいていく。
そして実は、かなめはその日を心待ちにしていたのだ。
‥‥
「誕生日かあ‥‥」

演技でも、ちょっとした恋人ごっこ‥‥それで若しかしたら意識しちゃったりなんかして‥‥
そうだ七夕祭の花火‥‥やっぱり誘ってみようかな‥‥。
うん、それでもっと、なんていうか、イイ感じになっちゃったりして‥‥。
それから、誕生日おめでとうって言えたら‥‥。少しは二人の関係も変わるんじゃ無いかな‥‥。
そんな淡い期待を秘めて。


その日は、明日に備え、準備や何やらで学級委員のかなめとその補佐の宗介の帰りは随分遅くなり。
誰も居ない夜道を、二人で並んで帰った。

「あのさ‥‥ソースケ」
「なんだ?」
「明日七夕祭じゃない? で、終わったら実は学校に戻って花火をやるの。」
「火花?」
「花・火!!」

夜道の静かな良いムードが急にコントのように変わりそうになるので、かなめは慌てて軌道修正を試みる。

「‥‥で、自由参加なんだけどね、その、一緒に行かない?」
「ああ、構わないが」
「良かった‥‥、その~~‥‥」
かなめが髪の毛を触りながら何やら口ごもるが、直ぐにまた宗介を見て続けた。

「言いたい事があるから、必ず来てよねっ!!」
「そうか、解った、必ず行く事にしよう」

「うん‥‥ねえソースケ」
「‥‥?」
「明日、天の川見えるといいね!!」


続く
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