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ネタ度    ☆☆☆☆☆
 シリアス度 ★★★★★ 
ラヴ度    ★★★★☆ 


割と重めな話ですが、前向きな内容・・・だと思います。
OMO~NOT未読の方は見ないほうが良いかも知れません。

あと私的解釈バリバリなので設定がおかしなところとか
ファンタジー要素入ってますのでご注意下さい。



穏やかな晴れの日の夕暮れ。

青空には僅かにピンク色が混じり、
窓からは柔らかな日差しが差し込む、都立陣代高校の放課後。

校舎は明るい生徒達の笑い声で溢れていた。

彼は廊下を歩いていた、足取りは軽い。
拡がる景色が目に映る。

―何時もの光景、ただそれだけの光景―

けれどただそれだけが、何故か今日は夢のように素晴らしく思えた。





「あ、相良くんだー!」
「おー相良ー!」

ぼんやり考えいると後ろから声をかけられ、彼は、相良宗介は振り返る。

声の主は眼鏡に三編みの少女と髪を黄色にした少年、
クラスメイトの常盤響子と小野寺孝太郎だ。

恭子が何をしていたの?と尋ねてきた。

「職員室に。用事を済ませていた。」
「職員室て…あー、相良君また神楽坂先生に呼び出されてたね。」
「む‥‥。」

またかよ、と笑って孝太郎が親しげに話しかける。

「…で、これから帰るのか?良かったらこれから‥‥ってそっちは昇降口じゃないぞ。」

そこで恭子がすかさず割り込んだ

「ちょっとオノDー、オノDてばヤボなんだから~、
相良君はこれから大事な用があるんだよ、だから私たちは早くかえろ♪」

「は?‥‥あ~‥‥、良いのう若いもんは、仲のよろしい事で結構結構‥‥」
「はいはい一緒に帰ってあげるから。じゃあね~相良君」

恭子は恨めしそうな孝太郎を強引に昇降口へと引っ張る。
はあっと、項垂れた孝太郎が後姿のまま手を振り、
笑いながら恭子がコチラを振り返り大きく手を振る。


「ああ。また。」

彼なりの親しみを込めて彼らを見送ると、宗介は向きを変え『彼女』が待つ教室へ向かう。

‥‥何故か不意に彼女がそこに居るかどうか不安になった




     ――早く、早く会いたい






しかし彼女は、千鳥かなめはちゃんとそこに居た。

彼女の背後から西日が差込み、ひどく眩しい気がして一瞬目を細めてしまう。

逆光となって彼女の輪郭だけを浮かび上がらせていた。
彼女がコチラに気付き近づいてくる。
それにつれ徐々に彼女の姿が映し出される。


細い手足がハッキリと見え、彼女のスカートが風で揺れるのを確認し、
そして最後に、はにかんだような彼女の笑顔を見つけた。

大切なものを隠した幕が、一枚一枚、あがって行くようだった。

ぼーっと見とれていた自分に気付いたのか、慌てて目を伏せ
「もうどうしたのよ」 と小突いてくる。


「あ、ああ‥‥。申し訳ない。‥‥呆けていた。‥‥その、‥‥帰ろう千鳥。」
宗介は訥弁に、しかも思わず自分の状況をそのまま答えていた。

「ぷっ、何それ!?」

その様子が可笑しかったのか、軽く吹き出してから、満面の笑顔をコチラに見せた。

先ほど宗介が自分を見ていた事に動揺しているのか、まだ少し頬が紅く、
まるで花の様な、鮮やかな笑顔だった。

その笑顔に、宗介の心は一瞬にして捉われ、自分の意志とは無関係に鼓動が高鳴る。
まるで高熱にでも浮かされているような気分だ。

暫くしてお互いが黙ると、妙な空気に包まれる。
『意識』してしまっているのだ。

 

「ソースケ‥‥帰ろうか?」
「あ、ああ」


堪らずかなめが切り出し、校舎を後にした。



続く

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