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釣り人と仔猫(前編1)


ネタ度   ★★★★★
シリアス度 ★☆☆☆☆
です。一応甘甘な話になる・・・予定。
前編もやたら長くなりましたが後編がメインです;

sahie1.gif

「うー・・・」
「ねーねぇーかなちゃーん。お昼だよ~!」
「う゛ー・・・」
「かーなーちゃんってばあー!」

 

昼下がりの都立陣代高校の女子高生二人の会話である。
といっても一人の少女、とんぼメガネにおさげの常盤恭子が一方的に話しかけており
一方のロングヘアーの少女、千鳥かなめは整った顔を歪めて唸るばかりだった。

「もーどうしちゃったのー?ご飯食べないの~?」
唸り続ける親友が心配になり、恭子はかなめの表情を伺う。
眉をしかめ、唇を噛締めるかなめのその表情はどこが苦しげに見え・・・
恭子にある疑惑が浮かんだ。

「はっもしかしてかなちゃん便秘?!」
「う゛ーーーん・・・・・」

「やっぱそうなんだ、そんなに苦しそうにして・・・!!
 色々悩みを抱えているんだね・・・だからストレスで・・・ちょっと待っててね!!」
そう言うと恭子は教室を飛び出してしまった。

 

 

 

一方、実のところかなめは聞いちゃいなかった。
渋い顔は便秘でもなんでもなく、ある悩みが原因であり、
悶々と考え続け、終始ウワの空だったのだ・・・。

(変だ・・・)

そう変なのだ。

(いや変なのは元からだけど、・・・違う、今日のアイツは一段と変!!)

ようやく顔を上げたかなめは「アイツ」が消えていったドアを睨み付ける。
その時丁度罪も無い黄色い髪の男子学生がかなめにガンを飛ばされる結果となり凍り付いていた。

(なーんか…隠してるわよねぇ・・・。)

 


****

 


4時間目の古典の授業の事だった。

「では相良くん、この時の人物の気持ちを説明してくれ」
「了解しました。」


例によってアイツが教師の質問に大ボケをかましクラス中がキレイにこけた。

・・・まあ何時もの事なのだが、
だから、かなめもいつもの事よ、と気軽に声をかける事が出来る。
古典教えてあげるから放課後よってかない?
と。

ところが、授業が終わり前に座るアイツに声をかけようとするより早く、
アイツはいそいそと教室を出ていってしまったのだ。

肩を叩こうとしていた片手は行き場を失い宙を泳いだ。

同時にかなめの想いも。

少なからず好意を自覚してしまっていた相手だった、そういう事に臆病な彼女に
は先程予定していた行動は少し勇気を出しての事だったのに。
その行き場を不意に失い、結果上の空のランチタイムであった。

 sahie2.gif

(そもそも朝からおかしかったわよね・・・)

かなめはドアを睨み付ける眼を一層険しくして黙考を続けた。

可哀相についでに睨まれている男子学生はもう涙目だ。
「お、オノDー・・・また千鳥さんに何かやったの・・?」
「またっておま・・・し、しらねぇよ俺・・!どうしようめちゃくちゃこえーよ風間~!!」
 


続く

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