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数分間そのままの状態で立っていた。
ぐすぐすと泣くかなめ、ただ肩に手を置いただけで何も言えない宗介。
良く考えれば今は下校途中だ、行き交う人々に何度かヒソヒソと言われて居た様だったが‥‥。
「ぐすっ‥‥‥‥ぐす。で、何を言おうとした訳?」
先ず少し落ち着いたかなめが沈黙を破った。
「いや‥‥、さっき言おうとして居たのだが‥‥君が」
そう、かなめの言葉に掻き消されていたのだった。
「は?あたしが?何?!」
「いや‥‥何でもない‥‥」
「‥‥変なの?」
言うと宗介が差し出したハンカチを無遠慮にぶん取って、少し笑った。
それを見た宗介がほっとして話を切り出す。
「面目無い‥‥、
ただ君が憂慮するような内容ではない事は保障しよう。‥‥‥‥多分」
「どっちよ!」
「いや、問題ない」
「何が?!」
「つまりだな‥‥‥‥」
「ふんふん?」
興味津々と言った様子のかなめの顔が、ぐーっと近寄る。
多分今日の最接近だ、
こんなに睫毛は長かったのか、とか、こんなに肌は艶っぽいのか、とか
近づくに連れ、自分との出来栄えの差に驚いてしまう。
彼女の前髪の一本一本まで見え、ついでに鎖骨と着衣の隙間が垣間見え‥‥‥‥
‥‥‥‥!!
途端に宗介は眼をそらす。
「こら、眼を逸らすな!!
何よ、なんか怪しい事でも企んでるってんじゃないでしょうね?!」
「いや、企んでない、企んでないが非常にまずい」
かなめが怪訝な顔でさらににじり寄る、宗介は困惑して大量の汗を流す。
「だから、何がっ?!てかコッチ見て言いなさいよ!!」
「すまないが、それは無理だ、出来無い。」
「な・ん・で・よっ!!」
宗介の訳の分からないボケに苛立ったかなめは、
彼の胸倉を掴んでガクガクと振り回した。
もう涙なんて微塵も残っていない。
「ぐっ‥‥、兎に角だ、今日は非常に、戦況は不利だ。」
「‥‥はあ?‥どいうこと?」
「つまりだ、今日はその‥‥場所も良くない。
この事を君に話すのは相応しくない。
君さえ良ければ、日を改めたいと思うのだ。」
「う、うーん‥‥まあ別に良いけど‥‥何よ改まって‥‥」
「感謝する、では、デートを要求する」
「はいはい、いーわよデートね、デート。
‥‥ってデート?!!」
「そうだ‥幸い明日から休みだ、特に任務も無い。
君の都合さえよければ‥‥の話だが。」
驚いたと同時に、突然の申し出に顔を真っ赤にするかなめ。
しかしそれも束の間、一つの疑惑が首をもたげる。
それは‥‥。
「ソースケ‥‥、あんた分かって言ってるの?」
「肯定だ、男女が日時、場所を定めて会う事を言うのだろう?」
「まあ、その通りだけど、‥‥‥‥意味は分かってないわよね。うははっ」
やっぱりね、と、肩を落とすかなめに気付かず宗介は続ける。
「返答を先送りしてすまない、だが、君とゆっくりと話しがしたい。
それと‥‥、君と一緒にやりたい事もあるんだ。だから。」
「‥‥だから?」
‥‥これはひょっとして。
胸の高鳴りを抑えようとばかりに息を呑み、かなめは言葉を待った。
「明日は君と一緒に過ごしたい。
申し訳ないが、俺に時間をくれないだろうか‥‥?」
明日は特に予定も無い。
予報では天気も快晴。
断る理由は一つも無い。
「別に、いいけど?」
そして何より。
――デートって意味‥‥、分かってるんじゃない。
かなめは上機嫌だった。
「ソースケ、楽しみにしてるわよ!」