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一応後編5の続き。

注!!
おまけエピローグです。ぱっぱと書いたネタものです。
個人的には無い方がいい気がするんですけど;話を締める為に書きました。
本当にネタまみれなので、これまでの流れを壊したくない方は読まないほうが良い、かも?


エピローグ

「本当に釣れない……」
宗介は静かに釣竿を動かしてそう呟いた。
うっかり忘れてしまいそうだが、宗介は昼間から今までずっと釣を継続している。

本音を言うと、彼女にどうしても大物を釣ってやりたかった。
今日、彼女は楽しい事も、安らぎも全部、与えてくれた。それがとても嬉しかったから。
彼女と居ると、なんだか何でも出来るような気がして、自信はあったのだが……。

「上手くいかないものだな」
一人ごちてまた静かに釣竿を揺らし、それから膝の上に横たえた彼女の横顔を見つめた。

自信を持てるのはきっと、彼女が居ると、パワーを分けてもらった気になるから‥‥それもあるのだけれど。

何よりも『彼女の為だから』なのだ。
幸せそうな彼女の顔を見ていて、ふいに宗介はそれに気付いた。

「よし。」
宗介は一人意気込んで、釣竿を振り下ろした。


******


「うーんむにゃ‥・・トライデント焼き‥・・全メニュー半‥・・額‥・・‥・・はっ!!」
瞼の裏に突然太陽の光を感じて、がばっ!とかなめは漫画的な起床をした。

「あ、あれ‥・・あたし。 なにしてたっけ?」
眠い眼をこすり見渡すと、そこは見慣れた自分の部屋。
かなめは自分のベットに寝ていた。

「‥・・あれ? 確か‥・・」
記憶を辿りながら、何気なく自分の着衣に目がいった。
フリルの付いたチュニックキャミソール、ショートパンツ、これから寝るような格好で無い、これは‥・・。
「あっ!ソースケと‥・・」
確か小笠原諸島付近の海域の無人島に遊びに行ったのだ。
釣をして、それから何時の間にか眠って‥・・。
「ま、まさか‥・・」
かなめの脳裏に教育上不適切な、それはそれは破廉恥な妄想が浮かんでは消え浮かんでは消えした。
「ちちち違う、違うわよ、何考えてるのよ‥・・! 有り得ない、あの朴念仁に限って‥・・!」
かなめは気を取り直して、今一度記憶を辿ってみた。
「その後、どうしたんだっけなあ」
すると突然に、よく解らない映像がフラッシュバックした。


狩猟民族に狩られた鹿のように運ばれる自分。
何か袋状のものに詰められ芋虫のように寝る自分。
盆踊り会場のような何か。間抜けた音。
「何故、電球が点灯したのだ? 何故消えない?」とかいう叫び声。
と‥・・その後何発か発砲音がしたような‥・・。


映像がそこまで浮かんだら、かなめはフラッシュバックを強制終了させた。
「いやー無事帰還できたようで良かった良かった。」
かなめはうんうんと頷いて、船の無事の事とか持ち主の事とかクルツの立場とか、
そういうのは深く考えないことにした。

それからダラダラと服を脱ぎ捨てながらリビングへ移動し、コーヒーフィルターとマグカップを取り出す。
気付けにブラックを飲みたい、と電気ケトルのスイッチを入れるのだった。

コポコポコポコポ‥・・‥・・

「‥・・楽しかったなあ。」

お湯が湧く間、かなめは昨日の想い出に身を浸す事にした。
何故だろう、妙に幸せな気持ちが胸に広がる。
二人で過ごして、楽しかったから、それで十分な理由になるけれど、確かもっと‥・・。

カチッ

電気ケトルが小気味良い音を立て、沸騰を知らせた。

「なんだったかな‥・・あいつ、何か言ったような‥・・」
かなめは回想しながら、フィルターにお湯を注ぐ。じわりじわりと少しずつ、慎重に。
やがて湯が染みてゆっくりと、濃い色のコーヒーがカップに落ちていく。

その様子を見ていると、同じ速さで、昨晩の出来事もゆっくりと抽出される気がした。
やがて、少しずつそのイメージのカタチが浮かんで来る。
アイツの真剣な目、そして‥・・、言葉。

 

   『君に会えて嬉しい。』

 

「‥・・‥・・はっ、あっ、あつッ!!」
突然の事に酷く動揺して、フィルターではなく手にお湯を引っ掛けてしまう。

「あーもうバカ‥・・何やってんのよ。」
取りあえずタオルで拭いたけれど、なんだか気持ち悪い。
「先にシャワー浴びようかな‥・・」
かなめはそう呟くとコーヒーを諦めバスルームへと向かった。

「嬉しい‥・・か。」
あの時、あたし、寝ぼけてたんだっけな?

「ちゃんと、起きてれば良かったな。」
そしたら、もしかしたら、言ってしまっていたかもしれない。
かなめは昨日着ていたキャミソールを引っつかんで、顔を埋めた。彼の匂いがする。

「‥・・好き‥・・って」


別に誰も聞いていないけれど、口に出して言うと酷く恥ずかしかった。

「うはは‥・・な、なに言ってんだろ‥・・やだなもう!」
かなめは照れ隠しに妙に明るく言い放って、それから『バーン!』と、元気よくバスルームのドアを開ける。

「うっ」
刹那、かなめは凍結した。

「きやぁああああああああああああああああああ!!」

バスタブには、敷き詰められた氷、そしておもむろに巨大な魚が横たわっていたのだ……。

「な‥・・なによこれぇ‥・・‥・・」
わなわなと震えながら、その巨大魚を良く良く見ると、その図体にぺったりと紙が張り付いており、
そこにはマジックで『昨日のお礼だ、君一人で食すと良い』と書いてある。

「あ・い・つ・は‥・・」
かなめはバスタブの淵を砕けんばかりに握り締め、その身をわなわなと震わせた。

「一・人・で、喰えるかーーーーーーーーーーーーーー!!!」

バスルームには、かなめの雄叫びがこだまし、ついでに磯の香りが充満していた。
これでは暫く風呂に入れない。

******


「ったくもう!!」
仕方が無いので、かなめはとっとと魚を捌いて、目にも止まらぬ速さで『二人分』に調理した。

「邪魔するわよっ!!」
それから直ぐに向かいのタイガースマンションに駆けつけ、とある部屋の玄関のドアを蹴飛ばし、突入。
機動隊も真っ青な所作だ。

「む‥・・どうしたのだ千鳥。 なんだ、魚臭いのだが。」
既に起床していたらしい住人、宗介が直ぐに飛んできた、心なしか目が充血している。
「じゃかしゃあっ!! 風呂っ!借りるわよ!!」
そう言ってずけずけと彼の部屋に侵入した。

「あ、それからこれ、朝ご飯ね。あんたも食べなさい。有り難く!」
そう言うと、粗末なテーブルにわざわざ持ち込んだらしい炊飯器と、朝ご飯と呼ぶには豪華な食事を置いて、かなめはバスルームに消えた。
と思ったら今一度顔を見せ。
「覗いたらぶちコロ●わよ!!」
と一言付け加え、ぴしゃりと戸を閉める。


朝っぱらから嵐のような出来事に、わけも解らず宗介は棒立ちしていた。

それから暫く考えて。
「‥・・良いのだろうか。」
そう言いつつも、宗介はいそいそとご飯を茶碗に盛り、かなめの作った『カツオのタタキ』を有り難く食す。

「うむ、美味い」
昨日に引き続き今日も、素晴らしい時間が過ごせそうだ。
そんな贅沢な日々に、誰にとも無く一人宗介は感謝をするのであった。

終わり。


後書きへ

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